「経営知識を身につけて、キャリアアップを目指したい」
そんなビジネスパーソンの間で注目されているのが、中小企業診断士とMBAのダブルライセンスです。
この2つを同時に取得することで、理論と実践の両輪を手に入れられ、企業内での昇進はもちろん、独立開業や副業にも大きな武器となります。
この記事では、以下の内容を現役の中小企業診断士がくわしく解説します。
ぜひ参考にしてください!

執筆者:花月 諒(中小企業診断士)
通信講座と独自の二次試験解法を用いて、約200時間の学習で中小企業診断士試験に一発合格。効率の良い勉強法や合格をつかむマインドを発信。福岡県中小企業診断士協会所属。

中小企業診断士とMBA、それぞれの特徴と違い
まずは中小企業診断士とMBAの違いを簡潔に説明します。
中小企業診断士とは
中小企業診断士は企業経営に関する診断・助言を行う「経営コンサルタント」で唯一の国家資格です。
一次試験合格後、①二次試験(筆記・口述)→実務補習②養成課程の修了を経て、登録を行えば「中小企業診断士」として活動できるようになります。

MBAとは?
MBA(Master of Business Administration)は、大学院で経営学を体系的に学び、修士号として取得する学位です。
経営戦略、財務、マーケティングなどを中心に、理論と実践を交えたケーススタディ形式の学習が多く行われます。
中小企業診断士は「国家資格」であり、業務や肩書に使える一方、MBAは「学位」であり、アカデミックな信用やビジネス教養の証となります。得意分野や到達点が異なるため、両方を取得することで補完関係が生まれます。
中小企業診断士とMBA、ダブルライセンスのメリットとは?
中小企業診断士とMBAのダブルライセンスは以下の3点です。
- 理論と実務の両面からスキルを高められる
- キャリアの選択肢が広がる
- 信頼性とブランド力の向上
理論と実務の両面からスキルを高められる
MBAで経営理論を体系的に学び、中小企業診断士で現場感覚や実務スキルを鍛える。2つを掛け合わせることで、高い視座を持って経営を考えつつ、ビジネスの現場も理解している人材として高い評価を得られます。
キャリアの選択肢が広がる
MBAを活かして大企業で経営企画などの業務に携わったり、中小企業診断士を活かして中小企業の伴走支援を行ったり、多様な働き方が可能になります。

どちらか一方だけでは届かないキャリアの可能性が広がります。
信頼性とブランド力の向上
中小企業診断士+MBAという肩書きは、取引先や顧客からの信頼にも直結します。コンサルタントや士業との連携においても、高い専門性を示す材料となります。
中小企業診断士とMBAのダブルライセンスを実現する方法2つ
中小企業診断士とMBAのダブルライセンスを実現するには、主に以下2つの方法があります。
- 二次試験合格+MBA修了
- 養成課程&MBA修了
二次試験合格+MBA修了
中小企業診断士とMBAを別々に取ります。具体的には、中小企業診断士は二次試験合格ルートで取得し、MBAを別途修了します。
二次試験合格のハードルが高い(合格率18%)ですが、自分が好きなMBAで学べます。ダブルライセンスを検討するなら、まずはこちらの方法を考えましょう。
養成課程&MBA修了
こちらは少し裏技チックで、中小企業診断士とMBAがまとめて取れるルート。
「養成課程」と呼ばれる機関を修了すると、二次試験と実務補習をパスして中小企業診断士登録ができます。(一次試験には自力で合格する必要があります)


養成課程は全国に13機関あり、そのうち以下の5つは、修了と同時にMBAが取得できます。
大学は限られていますし、他の養成課程と比べると学費も高いですが、中小企業診断士とMBAのダブルライセンスを考えている方には、非常に効率的です。
詳細は以下の記事をご覧ください。


※いずれの学校も定員・入試倍率があるため、早めの情報収集と対策が必要です。
中小企業診断士とMBAのダブルライセンスの取得にかかる時間・費用
前章のいずれのルートで目指すかにより、ダブルライセンスの取得にかかる時間と費用は異なります。
中小企業診断士とMBAをそれぞれゼロからとる場合、3〜4年は必要です。中小企業診断士は十分な勉強時間を確保し、二次試験のコツを押さえて勉強すれば1年でも十分受かりますが、現実的には2年は見ておくと良いでしょう。


働きながらMBAに通う場合、修了に2年は必要なので3〜4年はかかる計算になります。学費は中小企業診断士の勉強方法や入るMBAにより異なりますが、300万円以上はかかると考えましょう。
一方、養成課程&MBAの一括取得ルートの場合、最速1年で取れます。養成課程に入るために一次試験合格が必要になるので、その勉強期間を加味しても1年半〜2年で十分です。学費も安いところは200万円を切ります。
養成課程の費用感や補助金をもらえる仕組みについては以下の記事で解説しています。あわせてご覧ください。





お住まいから通学が可能で、特にどこかの大学にこだわりがないのなら、養成課程&MBAの同時取得が合理的と言えるでしょう。
取得順序の選択肢
- 診断士試験→MBA進学:資格を先に確保し、理論を補強する王道パターン。
- MBA進学→養成課程修了で診断士取得:試験を避けたい人向け。教育訓練給付金も活用可能。
自分の時間・お金・目的に応じて選びましょう。
費用と学習時間
ダブルライセンス取得者のキャリアパスと体験談
私の知り合いで、中小企業診断士とMBAの両方を取得された方の体験記を掲載します。ダブルライセンスを検討中の方の参考になれば幸いです。
私は現在、東京の不動産デベロッパーで勤務している40代の会社員です。
数年前までは営業一筋でしたが、経営企画部門への異動をきっかけに、「経営を体系的に学びたい」という思いが芽生え、結果的にはMBAと中小企業診断士のダブルライセンスを取得しました。
経営企画部門への異動と、MBAへの挑戦
40歳を迎えるころ、経営企画部門への異動の打診がありました。営業現場とは異なる視点が求められる部署。未経験の領域でしたが、これを機に一から学び直そうと決意し、MBAへの進学を決めました。
私は働きながら通える夜間のビジネススクールを選び、2年間で戦略・財務・組織論といった基礎を徹底的に学びました。
ケーススタディを通じた実践的な議論や、異業種の仲間との交流は、視野を一気に広げてくれました。
地方出身の想いと、中小企業診断士へのチャレンジ
私は地方の出身で、子どもの頃から地元の企業や商店が次々と姿を消していくのを見てきました。MBAで経営の基礎を学ぶ中で、「いつか自分の学びを地方企業の支援に活かしたい」という想いが強まり、中小企業診断士の資格取得を志しました。
通勤時間や休日を使って独学で勉強を続け、1年半ほどでなんとか合格。MBAと違って国家資格という実務寄りの側面があり、補助金支援や事業計画書の作成など、副業としての支援活動にもすぐに活かすことができました。
ダブルライセンスがもたらした変化
中小企業診断士としての知識と、MBAでの理論的な背景が両輪となり、副業で受ける支援先の中小企業からも非常に高い評価をいただいています。
一方、会社でも企画提案の説得力が増し、数年前とは比べ物にならないほど自信を持って会議に臨めるようになりました。
上司からの評価も上がり、社内の経営層と議論を交わす機会が増えるなど、キャリアパスにも広がりが出てきました。
何より、「まだまだ自分は成長できる」という手応えを持てるようになったことで、日々の生活にも張りが出てきたのを実感しています。
まとめ:中小企業診断士とMBAのダブルライセンスで未来を切り拓こう
中小企業診断士とMBAは、それぞれ異なる強みを持った資格と学位です。
その2つを掛け合わせることで、現場にも戦略にも強い“次世代型ビジネス人材”として、確かなキャリアを築くことができます。
あなたの目指す働き方や理想の未来に合わせて、このダブルライセンスを検討してみてはいかがでしょうか?記事を読んでくださった方のチャレンジを、心から応援しています!
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