
中小企業診断士の資格を活かして副業したい。中でも補助金申請支援は始めやすい副業って聞くけど、実際どうなの?
こんな疑問を解決します。
本記事では、コンサルティング会社で事業再生やM&A支援に従事しつつ、副業で補助金申請支援にも関わっている現役の中小企業診断士が、補助金申請支援の仕事内容や案件の探し方、報酬相場、注意点などを丁寧に解説します。現場目線のリアルな声をもとに書いていますので、きっと参考になるはずです。


執筆者:花月 諒(中小企業診断士)
通信講座と独自の二次試験解法を用いて、約200時間の学習で中小企業診断士試験に一発合格。効率の良い勉強法や合格をつかむマインドを発信。2024年より株式会社あおいFASで、中小企業向けの事業再生支援やM&Aに従事。福岡県中小企業診断士協会所属。


補助金申請支援の仕事は、中小企業診断士の副業にとても適しています。案件数を抑えれば平日の夜や土日だけでも時間は足りますし、中小企業診断士試験で学んだスキルを活かせる仕事だからです。実際に私も副業として本業の業務時間外に取り組んでいます。
補助金申請支援とは?仕事内容と必要スキル
補助金申請支援とは、主に中小企業や個人事業主が国や自治体の補助金制度を活用できるよう、事業計画の整理・申請書の作成・必要書類の確認・手続きのサポートなどを行う仕事です。
制度ごとに申請要件や目的が異なるため、企業の実態に合った補助金を見極め、戦略的に申請を通すための「筋の良い計画」を立てることが重要です。
また、書類作成だけでなく、ヒアリングから実行体制の構築、スケジュール管理、採択後のフォロー(実績報告や精算書類の確認など)に関わることもあります。案件の規模によっては、プロジェクトマネジメント的な動きも求められます。
主な業務の流れは以下の通りです。
- 企業へのヒアリング(沿革、既存事業、財務推移などを確認)
- 補助金の選定(例:事業再構築補助金、ものづくり補助金)
- 補助金の要項・要件等の確認
- タスクの整理、スケジュール作成
- 構成案の作成
- 事業計画書、補足資料等のドラフト作成
- ブラッシュアップ〜最終確認
- 申請支援(申請作業は企業自身が行う)
- 採択後のフォロー(事業実施報告や報告書作成の助言)
補助金申請支援には、文章力・ヒアリング力・経営分析力などが求められます。中小企業診断士試験で身につけた知識やフレームワークを活かせる場面が多く、仕事を通じて座学を実践に落としこめます。



特に二次試験で行う事例企業の分析は、事業計画書の構成検討にとても役立ちます。
補助金申請支援案件の獲得方法
実績ゼロの状態で補助金の申請を考えている中小企業にいきなり営業するのは現実的ではありません。最初のうちは、以下のような方法で案件を獲得するのが一般的です。
先輩の中小企業診断士からの紹介
すでに補助金申請支援の仕事をしている先輩の中小企業診断士から、仕事を紹介してもらえることがあります。つてがない方は、お住まいの地域の中小企業診断士協会に入ってコネクションを広げましょう。



ただ黙って待っていても仕事は入りません。自分から積極的に人脈を広げ、仕事を獲りに行く姿勢が大切です。
公的機関からの紹介
所属団体から補助金案件を紹介されることもあります。地域密着の診断士協会や商工会議所の活動に顔を出しておくと、案件獲得のきっかけになります。中でも、先輩診断士からの紹介は定番の案件獲得ルートです。
インターネット経由での受注
SNSやブログで、補助金申請のコツや支援実績を発信していると、補助金を活用したい中小企業から問い合わせが入ることがあります。上記の方法で経験を積んだら、役立つノウハウを文字や動画でまとめて発信するしてみましょう。
補助金申請支援の報酬相場と業務量
下請けとして補助金申請支援に従事する場合、着手金と成果報酬の相場感は以下です。(私がよく関与している「ものづくり補助金」の場合。年度や枠によっても金額は変わります)
- 着手金:5万円ほど(完全成功報酬の場合、着手金は発生しません)
- 成功報酬:10万円〜20万円
元請けに対しては、成功報酬が「採択額×⚫︎%」という形で支払われることが多いです。自分が元請けになる場合、報酬に関する取り決めは契約で明確にしておくことが重要です。
きちんと採択されれば、2ヶ月に一本の支援でも、月10万円ペースで稼げます。(中小企業診断士の副業で月10万円稼ぐ5つの方法【実体験】)
1件あたりの作業時間は10〜30時間と言われますが、実際には40時間以上かかることも珍しくありません。特に「補助金の選定」「ヒアリングの設計」「事業計画のブラッシュアップ」「添付資料の整備」「採択後のサポート」までフルに担う場合は、相当な稼働が必要です。
副業として引き受ける際には、どこまでを自分の担当範囲とするのかを明確にすることが肝心です。副業のつもりが、気づけば本業以上の時間を取られてしまい、本業での評価も下がる…ということもあり得ます。
以下の記事で、土日だけで仕事を進めるコツや具体的なスケジュールを解説しています。あわせてご覧ください。
»【初心者向け】土日だけで稼げる!中小企業診断士の副業アイデア集(実例あり)
未経験でも補助金支援は始められる?
未経験でも始められますが、いきなり「元請け(メイン担当)」として案件を持つのはリスクが高いと考えています。
なぜなら、補助金申請支援は単なる書類作成にとどまらず、クライアントの意向整理やマネジメント、報酬交渉、スケジュール管理、ヒアリング設計など、複合的なスキルが求められるからです。これらを未経験の状態で一手に担うのは、双方にとって負担が大きく、トラブルにもつながりかねません。
そのため、最初のステップとしては、知り合いの中小企業診断士や、事業者が進めている案件に「一部関与」する形で入るのが望ましいです。たとえば、構成案の作成補助や文案のレビュー、情報整理など、サブ的な役割から経験を積むことで、全体の流れや注意点が自然と理解できます。



私も最初のうちはヒアリングまで終わった状態で引き継いで事業計画書の作成のみをさせていただきました。
こうした経験を積み、「補助金の制度に強くなる」「求められる成果物の品質を学ぶ」「信頼関係を築く」ことができれば、徐々に自分で案件を持てるようになります。
未経験のうちは、「成功報酬の割合を下げる」「提案書の骨子だけ担当する」など、リスクを抑えた関わり方を意識すると、安心してスタートできます。
補助金申請支援で気をつけたいこと
補助金申請支援は中小企業診断士の副業として定番ではありますが、決して簡単な仕事ではありません。特に以下のような点には注意が必要です。
- 過度な約束をしないこと(採択の保証は不可)
- 顧客との契約書・報酬の取り決めは必ず書面に残す
- 申請書の品質だけでなく「読みやすさ」や「加点要素」にも注意
- 複雑な案件は他士業(税理士・社労士)との連携を検討
このあたりの実務的なポイントは『税理士のための「中小企業の補助金」申請支援マニュアル(水谷翠著)』にくわしく載っています。



税理士向けに書かれたものですが、中小企業診断士が取り組む際にもそのまま使える良い本です。
まずは一件、挑戦してみよう
補助金申請支援は、中小企業診断士の副業として取り組みやすい分野です。補助金によっては高単価の案件も多く、事業者との信頼関係を築ければ、継続的な仕事につながることも少なくありません。
最初は難しく感じるかもしれませんが、チャレンジすればするほど経験値がたまり、効率も報酬単価も上がっていきます。
副業として一歩踏み出すには、紹介案件から始めるのがおすすめです。そして、少しずつ実績を積みながら、補助金支援のプロとしてのポジションを築いていきましょう。
中小企業の挑戦をサポートする診断士として、補助金申請支援に挑戦してみませんか?
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