公務員が中小企業診断士を取得するメリット10選|将来設計に活きる資格活用術

当ページのリンクには広告が含まれています。
公務員の方が中小企業診断士を目指すメリットを、行政での仕事や将来のキャリア、資格の制度の成り立ちなどの観点から幅広く解説します。

公務員をしています。中小企業診断士の資格に興味があるのですが、公務員が目指すことにどのようなメリットがあるのでしょうか。

こうした疑問にお答えする記事です。

「公務員の仕事に国家資格が役に立つのか?」そう感じる方も多いかもしれません。しかし今、地域経済や産業振興を担う現場では、経営の知見や実務的な視点を持つ公務員の重要性が高まっています

また定年後のセカンドキャリアや、将来の不安に備えるために資格取得を検討する方も増えています。近年では、部分的ではありますが公務員の副業が解禁される動きも見られます。

この記事では、公務員が中小企業診断士を取得するメリットをくわしく解説します。

花月諒(イラスト)

執筆者:花月 諒(中小企業診断士)

通信講座と独自の二次試験解法を用いて、約200時間の学習で中小企業診断士試験に一発合格。効率の良い勉強法や合格をつかむマインドを発信。2024年より株式会社あおいFASで、中小企業向けの事業再生支援やM&Aに従事。福岡県中小企業診断士協会所属。

中小企業診断士試験に効率よく合格できる勉強法を知りたい方は、以下の記事から先に読んでいただけると、本記事の理解がより深まります。

目次

中小企業診断士は公務員のための資格だった

中小企業診断士は、中小企業の経営に対して助言・診断を行う「経営コンサルタント」の唯一の国家資格です。現在では民間企業のビジネスパーソンにも広く人気があり、社会人向けの資格ランキングでも上位に位置づけられています。

しかしそのルーツをたどると、診断士は本来、公務員向けに設計された制度だったことをご存じでしょうか?

かつては「中小企業診断員」という名称で、主に中小企業庁や都道府県の中小企業支援部門に所属する職員(技術職・経済職)が対象でした。当時の制度設計では、国家が中小企業支援を“政策”として行うにあたり、その現場で専門性をもって企業をサポートできる人材を育成・認定する目的があったのです。

その後、民間企業や独立コンサルタントにも門戸が開かれ、「中小企業診断士」という名称に改められました。今では民間向け資格として定着していますが、公務の延長線上にある資格であることは変わっていません

つまり、診断士の原点を踏まえると、公務員の仕事——特に中小企業支援や産業政策に関わる業務との相性は極めて高いと言えるのです。

中小企業診断士と公務員と相性が良い理由3つ

前述した制度の成り立ち以外にも、中小企業診断士と公務員の相性が良いと言える理由があります。主なものは以下の3つです。

  • 地方創生や起業支援の現場で、中小企業支援の実務視点が必要
  • 商工・産業政策に関わる部門では、診断士の知見が強みになる
  • 国家公務員(中企庁・経産省)や地方公務員(市町村商工課など)と親和性が高い

それぞれくわしく解説します。

地方創生や起業支援の現場で、中小企業支援の実務視点が必要

地方創生や地域活性化の現場では、補助金や施策を「制度として作る」だけでなく、「実際に中小企業や創業者がそれをどう活用できるか」という現場視点が求められます。

中小企業診断士の資格を通じて、経営課題のヒアリングや事業計画の策定支援といった実務経験に基づいたアプローチができるようになるため、行政側の担当者としての説得力や実効性が高まります。

商工・産業政策に関わる部門では、診断士の知見が強みになる

中小企業施策や産業支援策を担う部署では、事業構造や資金繰り、マーケティング戦略といった企業経営に関する実践的な知識が欠かせません。

中小企業診断士は経営全般を体系的に学ぶ国家資格であるため、施策の立案・評価・審査において、形式的な手続きにとどまらない深い理解と改善提案が可能となり、組織内でも貴重な人材として評価されやすくなります。

国家公務員(中小企業庁・経済産業省)や地方公務員(市町村商工課など)と親和性が高い

中小企業診断士の活躍分野は、政策の中枢である中小企業庁や経済産業省から、現場に近い市町村の商工課まで幅広く、公務員の業務と地続きのテーマを多く扱っています。

かげつ

公務員としての実務経験と診断士としての知見がうまく組み合わさることで、政策と現場をつなぐ存在として価値を発揮しやすい構造になっています。

公務員が中小企業診断士を取るメリット10選

この章では、公務員が中小企業診断士の資格を取るメリットを10個お話しします。

1. 地域経済政策の立案に活かせる

中小企業診断士の知見は、地域経済を支える中小企業の実態を深く理解するのに役立ちます。
たとえば、創業支援や事業承継支援、地場産業の再興といった地方自治体の政策立案において、「どの企業が、なぜ困っているのか?」を具体的に捉えられるようになります。

机上の理屈だけではない、“現場の視点”を持った施策が実現できるようになる点は、公務員にとって大きな強みとなります。

2. 異動希望・キャリア選択の幅が広がる

中小企業支援や産業振興に力を入れている自治体や部署にとって、診断士資格は専門性の証として評価されます。そのため、商工課・企業支援課などの部署への異動希望や、出向・交流人事の際にも有利に働く可能性があります。

組織内でのキャリア選択肢が増えるだけでなく、地域支援に携わる仕事を選びやすくなるという意味でも、長期的に見て大きな価値があります。

3. 補助金事業や融資支援での専門性向上

補助金審査や起業支援業務に携わる場合、企業の事業計画や収支予測を正しく読み取る力が求められます。

中小企業診断士としての知識を持つことで、計画の実現可能性や事業性の評価を的確に行えるようになり、より信頼性の高い行政対応が可能になります。また、企業側からも「話が通じる人」として一目置かれるようになり、相談件数や満足度が高まる傾向もあります。

4. セカンドキャリアの土台になる

定年退職後、再任用ではなく自分らしく働ける道を選びたいという人にとって、診断士は有力な選択肢です。

個人事業主として独立する、公的機関の外部アドバイザーに就任する、研修講師として活動するなど、活躍の場は多様です。

かげつ

資格を活かした再就職先も豊富にあり、年齢を重ねても専門職として仕事を続けられる土台になります。

5. 地元企業や経営者との信頼構築

公務員として地域に根ざして活動していると、企業や経営者と顔を合わせる機会が多くなります。中小企業診断士としての視点を持ち、実務的なアドバイスができるようになると、「頼れる存在」としての信頼を得やすくなります

このような信頼関係は、公務員としての仕事にとどまらず、将来的に独立した際や別の形で地域に関わる際の人的資産となっていきます。

6. 知的・実務的なスキルアップ

診断士の試験では、財務・経営・法務・IT・組織論・マーケティングなど、幅広い知識を体系的に学ぶ必要があります

また、2次試験では実務的な課題解決力や論理的思考力が問われます。この過程を通じて、現場で応用できる“使えるスキル”が確実に身につくため、日常業務の精度や視点も自然とレベルアップします。

7. 政策と現場をつなぐ存在になれる

中小企業支援において、制度と現場の間には“温度差”や“溝”が存在することがあります。中小企業診断士のスキルを持つことで、現場の声を政策に反映させたり、制度の実効性を検証したりする役割を担えるようになります。

行政と中小企業の“翻訳者”のような立場で、より良い仕組みをつくる中核人材として評価される可能性が高まります。

8. 家族や親族の事業をサポートできる

家族が商売をしていたり、親族が起業を検討していたりする場合、中小企業診断士の知識と視点は大きな助けになります。

創業計画、資金調達、集客の考え方、人材管理など、経営全体の支援ができるため、単なるアドバイスを超えた価値提供が可能です。本業とは別に、プライベートな場面でも人の役に立てることは、大きなやりがいにもつながります。

9. 副業・兼業の可能性(条件付き)

公務員法により原則副業は制限されていますが、無報酬の活動や、許可を得た兼業であれば診断士としての活動が認められるケースもあります。

たとえば、地域イベントの経営相談員や、商工会議所のアドバイザーとして活動するなど、公務の延長線で“外に向けた活動”が可能になる余地があります。実際に副業を行う場合は、所属自治体の人事担当に確認することが必須です。

10. 「面白い公務員」として注目される

二次試験合格者に占める公務員の比率は4%前後です。中小企業診断士資格を持つ公務員はまだまだ少数で、その存在自体に希少価値があります。

そのため、イベント登壇や地域セミナーの講師として声がかかる、若手職員のロールモデルとして注目されるなど、“専門性を持つ公務員”として目立ちやすいという利点があります。組織の中でも外でも、「ただの役所の人」ではない、プロフェッショナルとしての存在感を発揮できます。

公務員が中小企業診断士資格を取るときの勉強法

公務員の方が資格試験の勉強をする際、勉強時間を安定して確保しやすい点が強みになります。部門や時期にもよりますが、基本的には夜間・休日の労働が発生しないためです。

そのため、平日や週末を活用して、少しずつ勉強を積み重ねるのがおすすめです。中小企業診断士の一次試験には「科目合格制度」があり、最大3年かけて一次試験合格を目指せます。勉強のボリュームを考えても、2年あれば無理なく合格を目指せます。

中小企業診断士を目指す場合、主な勉強法は「市販テキストや通信講座を使って独学する」「予備校に通学して講義を受ける」の2つです。

独学は時間と費用を節約できる一方、自己管理能力が求められます。通学はお金はかかりますが、強制力があり、仲間も周りにいるので学習を続けやすいです。

かげつ

私は通信講座を使いました。詳細は【独学】中小企業診断士完全攻略ガイド│200時間で一発合格した勉強法で解説しています。

おわりに:中小企業診断士×公務員の未来像

中小企業診断士の資格を持つことで、公務員は単なる行政職員にとどまらず、官と民の橋渡し役としてのポジションを築くことが可能になります。これまで「制度を運用する側」にとどまっていた立場から一歩踏み出し、政策の現場実装まで担える行政人材としての進化が期待されます。

たとえば、自治体内での創業支援施策や中小企業向け補助金制度の設計において、中小企業診断士としての現場感覚があれば、より実効性のある施策が生み出せます。こうした実績を積むことで、民間企業や地域支援団体からも信頼される存在となり、組織の枠を超えて活躍できる人材へと成長できます。

将来的には、第三セクターや金融機関、ベンチャー支援団体への転職といったキャリアシフトも視野に入ります。また、地元の産業界で存在感を発揮し、地方議会にチャレンジする道もあり得るでしょう。

中小企業診断士という資格は、行政の枠内だけで完結するキャリアではなく、多様なキャリアの可能性を開く扉となり得ます。興味がある方は、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次