
二次試験対策の情報を調べていて「ファイナルペーパー」を作っている人が多いことが分かりました。これって何ですか?
こんな疑問に、現役の中小企業診断士がお答えします。
中小企業診断士の二次試験は一次試験とは異なり、正解のない記述式試験です。
与件文の読解力、設問要求の解釈力、論理的な記述力といった複合的な能力が求められます。
そんな中、受験者の多くが取り入れているのが「ファイナルペーパー」というツールです。
本記事では、ファイナルペーパーとは何か、なぜ作成すべきなのか、そして具体的な作り方や記載項目を、実体験をもとにくわしく解説します。



テンプレートも配布しているので、ぜひ参考にしてください!


執筆者:花月 諒(中小企業診断士)
通信講座と独自の二次試験解法を用いて、約200時間の学習で中小企業診断士試験に一発合格。効率の良い勉強法や合格をつかむマインドを発信。福岡県中小企業診断士協会所属。


二次試験対策の定番ツール!ファイナルペーパーとは何か
ファイナルペーパーとは、中小企業診断士二次試験に向けた、自分専用の最終確認資料のことです。
多くの受験生が試験直前期に作成し、自分の弱点や気づきを1枚または数枚のペーパーに集約します。
- 自作であること(自分の思考を整理したオリジナルものである)
- 一目で確認できるように、情報が整理されていること
- 試験当日に持ちこめるサイズであること(アナログでもデジタルでもOK)



私もPowerPointでファイナルペーパーを作っていました。
私のファイナルペーパーをテンプレート化したものを用意しています。パワポがお好きな方は、ぜひご活用ください。
二次試験対策でファイナルペーパーを作る理由3つ
ファイナルペーパーを作る理由は以下の3つです。
- PDCAサイクルを回せるようになるから
- 自分の「型」を作れるようになるから
- 精神的な支えになるから
1. PDCAサイクルを回せるようになるから
ファイナルペーパーには、自分が過去問や模試を解いた際の振り返りを書きます。そこで見つけた改善点を次の演習に活かすことで、PDCAサイクルを回せます。
中小企業診断士の二次試験は、受験生によって苦手な箇所が大きく異なります。与件文を読み飛ばす、設問文を見誤る、文章を書くのが苦手、などさまざまです。
そのため、市販教材を読み、模範解答を真似するだけでは対応しきれない自分固有の課題が必ずあります。
ファイナルペーパーは、そうした課題に向き合い、自分の弱点・対策ポイントを集約することで、最短ルートで改善につなげるツールになります。



ファイナルペーパーは、どんなに優れた参考書でも代替できない、あなただけの攻略マニュアルになります。
2. 自分の「型」を作れるようになるから
中小企業診断士の二次試験は、科目あたり80分しか時間がありません。短時間で質の高い答案を作るには、自分の「型」を持つことが大切です。
ファイナルペーパーを作っていると、自分の得意・不得意に気づき、だんだんと自分の「型」が見えるようになります。
「与件文からの拾い漏れが多いから、読み込みの時間を長めに10分くらい取ろう」とか「文章が破綻しやすいから、最初に主語・述語などの骨格を決めよう」とか、そんな思考です。
ファイナルペーパーは「型」を作る上で最高のインプットになります。
「型」の重要性は以下の記事でくわしく説明しています。合わせてご覧ください。


3. 精神的な支えになるから
本番の試験会場では、焦りや緊張が想像以上に影響します。
そうした中で、「自分はこう解く」「こういう場面ではこう考える」という判断の軸があるかどうかで、メンタルの安定も、答案の質も大きく変わります。
ファイナルペーパーは、あなた自身が積み重ねてきた知識と経験の集約であり、迷いを振り払って“自信を持って解答する”ための土台になります。
見直すだけで落ち着ける「お守り」のような役割も果たしてくれるでしょう。
二次試験のファイナルペーパーの作り方【3パターン比較】
ファイナルペーパーの作り方は以下3つのいずれかを選ぶ方が多いです。
- 紙のノートに手書きする
- PowerPointで作成する
- メモアプリで作成する
自分のスタイルに合ったものを選びましょう。
1. 紙のノートに手書きする
手を動かすことにより記憶が定着しやすい、色の使い分けや整理の方法が柔軟といったメリットがありますが、時間はかかります。
2. PowerPointで作成する
慣れている人なら、仕事をするのと同じ感覚でサクッと作れるのが利点です。ショートカットキーの操作に習熟していないと、手書きより時間がかかる点にはご注意を。
3. メモアプリで作成
Notion、Google keep、Apple純正メモアプリなどで作成します。スマホがあればどこからでもアクセスできますし、必要に応じて印刷もできます。



私はパワポで作っていましたが、今また勉強するならメモアプリを選びます。
二次試験のファイナルペーパーに記載する項目例
私が実際にファイナルペーパーにまとめていた内容を紹介します。
- 回答の手順・時間配分
- 演習で気づいた改善点
- よく使うフレーズ
- よく使う基礎知識
回答の手順・時間配分
回答に再現性を持たせるため、答案を作るための手順を分解し、以下のように時間配分を定めていました。
手順 | 時間 |
---|---|
1. 設問文を読む | 2分 |
2. 与件文を読む | 8分 |
3. 設問を解く | 60分(12分×5問) |
(3-1. 文章の型を考える | (2分 |
(3-2. 答えを探す | (6分 |
(3-3. 合体する(文章を書く) | (4分 |
4. 誤字・脱字の確認 | 10分 |
これをファイナルペーパーの最初に入れ、自分への約束事として、演習の前に毎回、眺めていました。
演習で気づいた改善点
過去問を解き、合格者の再現答案や予備校の解答例と見比べると、自分の改善点を色々と発見できます。
私も当時は以下のようなことを書き留めていました。
- 与件文の記述を見落とし、想像で答えている
- 答案に横文字が多い。平易な日本語で書くことを心がける
- 「理由とあわせて答えよ」と指示されていたのに、理由を書いていなかった。前提条件にはチェックを入れ、抜け漏れを防ぐべし
メモした改善点を演習や試験本番の前に見直すことで、同じミスの繰り返しを防ぎます。



振り返りは事例全体ではなく、設問1つずつ丁寧に行うと良いでしょう。
よく使うフレーズ
振り返りの中でレベルの高い答案を見ていると、よく出てくる言い回しや回答のパターンがあることに気づきます。
それらも1箇所にまとめて頻繁に眺めることで、自分の引き出しとして使える言葉になっていきます。
色々な記事で話していますが、二次試験では創造性は求められていません。他人の良い言い回しは積極的にマネしましょう。
よく使う基礎知識
二次試験は基本的に「考える試験」ですが、それでも最低限の基礎知識は必要です。
事例1(組織・人事)を例に挙げると、以下のような論点がよく出ます。
- 事業承継(M&A)
- 組織形態のメリット・デメリット比較(特に機能別組織はよく出る)
- 従業員のモラール向上
こうした基礎知識も、自分にとってわかりやすい形で整理しましょう。『2次試験合格者の頭の中にあった全知識』を一読するのがおすすめです。


おわりに:ファイナルペーパーを作って合格をつかもう!
今回はファイナルペーパーの作り方を紹介しました。
完璧なものを作る必要はありません。むしろ自分に必要なことだけを、必要な分だけ書くことが大切です。
試験本番で「何をすべきか」「どこに注意すべきか」が明確になっているかどうかで、安心感も、得点も大きく変わります。
記事で紹介した内容を含めたテンプレートを、Googleドキュメントで作成しています。よかったら参考にしてください!
»ファイナルペーパーテンプレート(Google ドキュメント)
皆さまの合格を願っています!
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