
中小企業診断士の養成課程に入ろうかと思っています。学費が高いですが、補助金をもらえる制度はありますか?
このような疑問に、現役の中小企業診断士が答えます。
中小企業診断士になるルートは、①二次試験→実務補習を経るルート②養成課程を修了するルートの2つがあります。


養成課程は修了すれば確実に中小企業診断士になれる一方、200万円〜300万円の学費がかかります。決して安くはありません。
しかし多くの養成機関は厚生労働省が指定する「教育訓練給付制度」の対象講座となっており、学費の一部補助を受けられます。
この記事では、全国に13個ある養成課程の補助金の有無をくわしく説明します。養成課程を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。


執筆者:花月 諒(中小企業診断士)
通信講座と独自の二次試験解法を用いて、約200時間の学習で中小企業診断士試験に一発合格。効率の良い勉強法や合格をつかむマインドを発信。福岡県中小企業診断士協会所属。


注)本記事は2025年6月時点の情報に基づき作成しています。最新の情報は必ず厚生労働省のWebサイトで確認してください。また大学等が行う養成課程は「登録養成課程」が正式名称ですが、便宜上、本記事では「養成課程」に統一します。
資格取得の補助金|教育訓練給付制度とは
教育訓練給付制度とは、労働者の主体的なスキルアップを支援するため、厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練を受講・修了した方に対し、その費用の一部が支給される制度です。


給付には以下の3種類があります。
- 専門実践教育訓練(上限64万円/年)
- 特定一般教育訓練(上限25万円)
- 一般教育訓練(上限10万円)
中小企業診断士の養成課程の一部は「専門実践教育訓練」及び「一般教育訓練」に指定されています。
教育訓練給付金を受給するには、雇用保険への加入期間などの一定の給付条件があります。細かなルールは必ず厚生労働省のWebサイトで確認してください。





自分が支給要件を満たしているかは、お近くのハロワに行けば教えてもらえます。
補助金(教育訓練給付)が支給される養成課程一覧
2025年6月現在、開講されている養成課程について、教育訓練給付の支給有無(支給種別)及び支給上限額を調べました。それらを整理したのが下の表です。
機関名 | 所在地 | 学費 | 給付種別 | 支給上限 | 期間 | 全日制 | MBA取得 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
中小企業大学校 | 東京都 | 235万円 | (なし) | ー | 6ヵ月 | ● | |
法政大学 | 東京都 | 259万円 | 専門 | 40万円〜64万円 | 1年 | ● | ● |
日本生産性本部 | 東京都 | 275万円 | (なし) | ー | 6ヵ月 | ● | |
日本マンパワー | 東京都 | 275万円 | 一般 | 10万円 | 1年 | ||
日本工業大学MOT | 東京都 | 250万円 | 専門 | 40万円〜64万円 | 1年 | ||
城西国際大学 | 東京都 | 255万円 | 専門 | 80万円〜128万円 | 2年 | ● | |
東洋大学 | 東京都 | 不明 | 専門 | 80万円〜128万円 | 2年 | ● | |
千葉商科大学 | 千葉県 | 258万円 | 専門 | 80万円〜128万円 | 2年 | ● | |
中部産業連盟 | 愛知県 | 242万円 | (なし) | ー | 1年 | ||
大阪経済大学 | 大阪府 | 200万円 | 専門 | 40万円〜64万円 | 1年 | ||
兵庫県立大学 | 兵庫県 | 184万円 | 専門 | 66万円〜106万円 | 2年 | ● | |
福岡県中小企業診断士協会 | 福岡県 | 275万円 | 一般 | 10万円 | 1年 | ||
札幌商工会議所 | 北海道 | 204万円 | 一般 | 10万円 | 6ヵ月 | ● |
専門実践教育訓練の支給上限額は概算です。正確な支給額は、ハロワや各実施機関に確認してください。
原則として、専門実践教育訓練では、教育訓練経費(学費や受講料のうち、教育訓練の経費として認められるもの)の50%が支給されます。
しかし、訓練終了後に雇用保険の被保険者として雇用された場合や、訓練終了後の賃金が受講開始前と比べて5%以上上昇した場合は、支給率が増加します。
【参考】教育訓練給付金の支給を受けたい方へ(厚生労働省Webサイト)
本記事執筆時点(2025年6月)、最も安く受講できる養成課程は兵庫県立大学です。MAXで教育訓練給付金が支給されると、実質負担額は100万円を切ります。
補助金(教育訓練給付)が支給される養成課程の調べ方
教育訓練給付の対象講座は、厚生労働省の「教育訓練給付制度検索システム」というWebサイトで調べられます。


トップ画面から「講座・スクールを探す」に進み、機関名を入力すれば検索できます。



講座終了後の賃金の変動や、受講者が感じた効果や満足度も調べられます。養成課程を検討している場合は、必ず確認しましょう!
勤務先が養成課程の受講料を補助してくれる場合がある
勤務先が以下に該当する場合、養成課程の受講料を補助してもらえる可能性があります。
- 地方公共団体、公的機関等
- 金融機関等
地方公共団体、公的機関等
中小企業大学校の養成課程は、受講者が以下の機関に所属する職員で、各機関が現場で中小企業診断士として中小企業の支援業務に従事させることを前提に派遣する場合、受講料が大幅に安くなります。(2,343,000円→1,205,000円)
- 国及び地方公共団体
- 中小企業支援法第7条第1項に規定する法人(産業振興センター、中小企業支援センター等)
- 中小企業関係団体(商工会議所、信用保証協会等)
【参考】中小企業診断士養成課程第44期生募集要項(中小企業大学校)
これだけでも負担は大きく減りますし、さらに勤務先が補助を出してくれれば、手出しゼロで通える場合もあります。(出向扱いで行けることもあります)



公的機関にお勤めの方が中小企業診断士を取るメリットは多いです。以下の記事も参考にしてください。


金融機関等
銀行などの金融機関は、社員の中小企業診断士取得に力を入れています。特に地方の中小企業の顧客が多い地方銀行はその傾向が強いです。
たとえば、静岡県の地方銀行である清水銀行は、2023年から中小企業診断士を取得した行員に対し、300,000円の報酬を支給する支援制度を創設しました。
【参考】人的資本の充実に向けた人事制度改定について(株式会社清水銀行)
このような報酬は他の銀行でも導入されていますし、会社によっては、会社負担で養成課程に通える可能性があります。金融業界にお勤めの方は、社内の支援制度を確認してみましょう。
まとめ
今回は、中小企業診断士の養成課程を受ける方がもらえる補助金などについて解説しました。最後に要点を整理します。
- 大半の養成課程は厚生労働省の教育訓練給付制度の対象講座に指定されており、これを使えば受講料の補助を受けられる
- 給付要件や支給額のルールは細かいので、厚生労働省のWebサイトで調べたり、ハローワークに問い合わせてみるべし
- 地方公共団体、公的機関、金融機関(特に地方銀行)にお勤めの場合、勤務先から補助を受けられる可能性がある
養成課程については、他にも色々と記事を書いているので、ぜひ参考にしてください!




最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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