
中小企業診断士二次試験の口述試験が廃止されるかも、という噂を聞いたのですが、本当ですか?
こうした疑問に、現役の中小企業診断士が答えます。
実は、本記事の執筆時点(2025年5月)、中小企業診断士の口述試験は廃止に向けた議論が進んでいます。
「え?ほんとに?」と驚く方も多いかもしれませんが、これは正式な制度見直しプロセスの中で実際に検討されている事項です。
この記事では、口述試験の廃止が検討されている背景や廃止の目的などを、筆者の実体験を交えてわかりやすく解説します。


執筆者:花月 諒(中小企業診断士)
通信講座と独自の二次試験解法を用いて、約200時間の学習で中小企業診断士試験に一発合格。効率の良い勉強法や合格をつかむマインドを発信。福岡県中小企業診断士協会所属。


中小企業診断士の口述試験が廃止される可能性があるって本当?
本当です。
2024年12月から2025年2月にかけて、有識者による検討委員会が3回開催され、試験制度の見直しが議論されました。
【参考】中小企業診断士試験に関する検討委員会とりまとめ(2025年2月、(一社)日本中小企業診断士協会連合会)
その内容をもとに、2025年5月には経済産業省がパブリックコメントの募集を開始。公式に「口述試験の廃止」が提案事項として提示されました。
【参考】中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則の一部を改正する省令(案)に対する意見募集の結果について(2025年5月、経済産業省)
単なる憶測やネット上の噂ではなく、制度改正に向けた動きが現実化しています。
中小企業診断士の口述試験を廃止する趣旨とは?
前述の検討委員会のとりまとめ資料によると、口述試験を廃止する趣旨として、以下の4点が示されています。
- 試験運営の経費削減
- 試験の簡素化
- 受験者負担の軽減
- 受験手数料の適正化
それぞれくわしく見ていきましょう。
試験運営の経費削減
まず何より大きな理由が、財政上の問題です。今回の件で私も初めて知ったのですが、中小企業診断士試験は赤字経営の状態が続いています。
コロナ禍以降、ソーシャルディスタンスに配慮した運営により、試験運営コストが大幅に増加。その影響で、受験手数料も段階的に値上げされてきました。
記憶に新しいところでは、2023年度に、台風の影響で沖縄地区の一次試験が中止となり、当初は「再試験は行わない」と発表されて炎上しました。
この背景にも、再試験の実施が厳しいほどの財政難であったことが推察されます。こうした中で、最も経費削減効果が高い施策として口述試験廃止が検討されたものと考えられます。
試験の簡素化
口述試験は10分間で4問程度の質問に答える、面接形式の試験です。


試験とはいえ合格率は99%以上。遅刻せずに会場に行き、日本語を話せば基本的には合格します。
こうした背景から「そもそもやる意味あるの?」という声は以前からありました。
もちろん、「素行や人柄を確認する」という意義もあるのですが、実際にはその役割も実務補習や養成課程の段階で十分カバーできていると評価されています。
受験者負担の軽減
口述試験は受験者数の多い都市でしか開催されないため、遠方から会場に出向く必要がある受験者も多くいます。
場合によっては、たった10分の口述試験のために前泊が必要になり、一部の受験者には大きな負担を強いています。



私が福岡県で口述試験を受けた際も、スーツケースを引いている受験者を数名お見受けしました。
口述試験を廃止することで、受験者の負担を軽減できます。
受験手数料の適正化
口述試験を廃止することで、当然その分の運営コストは削減されます。
実際、二次試験の受験料は口述試験の廃止に伴い、現行(2025年度まで)の17,800円から15,100円に引き下げる案が検討されています。
一方、試験運営にかかる累積赤字の解消や繰越金確保の観点から、一次試験の受験料を増やし、受験料の総額は維持するとのことです。まとめると下の表のようにになります。
試験 | 現行の受験手数料 (2025年度) | 見直し案 (2026年度以降?) |
---|---|---|
一次試験 | 14,500円 | 17,200円 |
二次試験(筆記) | 17,800円 | 15,100円 |
二次試験(口述) | (廃止) | |
合計 | 32,300円 | 32,300円 |
つまり、「廃止された分、受験手数料の総額が安くなる」という単純な話ではなく、あくまで全体的な財政バランスと繰越金確保の一環として整理されているようです。



最速だと2026年度(令和8年度)の試験から口述試験の廃止、受験手数料の見直しが行われる可能性があります。
筆者の意見:私は口述試験の廃止に賛成です
私は今回の改正案について、口述試験の廃止には賛成です。
なぜなら口述試験は合格率が例年99%以上であり、選抜試験として機能しているとは言い難いからです。
実際、私自身も口述試験を受けて「全然上手に受け答えができなかったのに、これでいいの…?」という気持ちを抱いた記憶があります。
加えて、中小企業診断士協会連合会も指摘しているように、コミュニケーション能力などの素養は、実務補習や養成課程で十分チェックできます。
口述試験の廃止は合理的と言えるでしょう。ただ、一緒に検討されている受験手数料の見直しについては「うーん」と思うところもあります。この点は別の記事で話します。
まとめ:診断士制度の進化を前向きにとらえよう
中小企業診断士の試験制度は、時代に合わせて少しずつ進化しています。口述試験の廃止もその一つの流れに過ぎません。
制度が変わっても、合格に必要な本質的な部分は変わりません。試験の形式に気を取られず、コツコツと勉強を重ねましょう。
本気で中小企業診断士の勉強に取り組みたい方は、以下の記事を読んでください。200時間で一発合格した私の勉強法を完全公開しています。


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